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菩提薩た※四摂法
仏教経典や道元の『正法眼蔵』では、庶民を救うために庶民と接するにあたっては、菩提薩埵四摂法(ぼだいさったししょうぼう)に基づくことを勧めています。江戸時代、農民は出家することが許されませんでした。そうした農民の苦しみを救うための方法のひとつが菩提薩埵四摂法でした。
菩提薩た※とは菩薩のこと、四摂法とは布施、愛語、利行(りぎょう)、同事の四つの手段のことです。
良寛は衆生を済度するために、この菩提薩埵四摂法を実践しました。良寛の布施、愛語、利行、同事は菩薩行だったのです。
托鉢と布施
良寛は托鉢を行うことで布施(ふせ)を行いました。
托鉢とは財施(ざいせ)と法施(ほうせ)などが同時に行われることです。人々からお米やお金などの財の布施をいただくと同時に、良寛は人々に様々なものを施しました。法施、無畏施(むいせ)、和顔施(わげんせ)、愛語施、仏徳施などです。
法施とは、托鉢の時に経文を唱えたり、仏の教えを話したりする布施です。
無畏施とは、仏法の真理を知ることで、不安や恐怖がなくなるということを説いて安心させることです。
和顔施とは、やさしい慈愛に満ちた表情・笑顔で相手と接することです。
愛語施とは、やさしい言葉を相手にかけることです。
仏徳施とは、厳しい修行を積み、高い悟境に達した良寛の清らかな心、慈愛に満ちた仏の徳を体現した人格に接した人々が自然に感化を受けることです。
良寛の托鉢での布施は法施、無畏施より、和顔施、愛語施、仏徳施が中心でした。
また、托鉢以外でも、和歌を詠みかわすことや、良寛の心を詠った詩歌を書いた書を無償で与えることも布施でした。
子供たちに行動で教えを諭すことも布施でした。
愉快な行動で笑いを与えることも布施でした。笑いは健康になる効果があり、人を幸せにします。
愛語
やさしい言葉をかける愛語を良寛は非常に重視しました。良寛は決して言葉をおろそかにしませんでした。数多くの戒語を残したのもそのためでした。
良寛は、道元の正法眼蔵の「愛語」を丁寧に書き写しています。それは次の文章です。
利行
相手をいたわり支えることが「利行(りぎょう)」です。
良寛は疲れたり体調の悪い農民に按摩や灸をしたり、具合の悪い人には看病したりしました。
また、亡くなった親の命日だと聞けば、読経もしました。
子供たちと一緒に遊んだのは、農作業で忙しい親に代わって、子供たちの面倒をみていた利行だったのです。
同事
同じ境遇に身をおき相手に安らぎを与えることが「同事(どうじ)」です。
良寛が子供たちと一緒に遊んだことも、同事行でした。
遊女とオハジキをして遊んだのも、辛い境遇にある遊女たちを慰めて救うための同事行でした。
良寛は親しい農夫とよく一緒に酒を酌み交わしました。そのことを詠んだ漢詩もいくつかあります。